未来への種まき~伝え続ける語り部プロジェクト~


伊藤崇史さん「ふるさと福島への思い―スタディツアー」



 

私は震災直後に福島大学に入学しました。

           

当初はボランティアセンターに所属し、津波のあった沿岸部で泥かきをしたり、仮設住宅で傾聴などをしたりしていました。きっかけは震災直後自分が何もできなかったことです。実際の津波の跡や、避難してきた人の話はとても衝撃的でした。原発20km圏内では馬が道路を歩いていたり、仮設住宅では仕事がなく毎日昼間から酒を飲む男性にも会いました。小学生の子どもを持つ母親の話によるとクラスの半分の子が甲状腺に腫瘍ができているといいます。

     

震災から一年がたち、他の東北の被災地が着実に復興に向かっている中、福島は何も変わっていない。かといってどうしたらいいのか誰もわからない。そして報道もされなくなり福島は着実に忘れられている。生まれ育ってきた福島がこんなになるなんてとても悔しかった。

           

今私が企画している福島でのスタディーツアーはそんなふるさとへの想いがきっかけでした。福島を実際に見て感じ、考え、福島に関心を持ってほしい。漁業、観光、農業の3つのテーマでそれぞれ行ったこの夏のツアーは、全部で80名の参加者を県内外から動員し、参加者や地元の方からも高い評価をいただくことができました。私がこの企画を通じて感じたことは、自分が知らない福島がまだまだたくさんあるということです。私が今回担当の農業ツアーを行った二本松市の東和地区は震災前から農業に力を入れてきた地域です。県外から移り住み、新規で農業を始めた人も多くいます。農業の他にもグリーンツーリズムなど地域のコミュニティに関わる先進的な活動を震災後も積極的に行ってきました。福島と一言で言っても地域によって事情は全く異なります。この東和地区のほとんどの田畑の土からは放射能が検出されませんでした。しかし震災後は風評被害により野菜の値段は暴落し、農家の暮らしは厳しい状況にあるのが現状です。

           

被災地の問題を考えることは日本の将来を考えることだと私は思います。みんなが当事者意識を持つこと。そうすればもっと福島はよくなるし、日本もよくなっていくのではないでしょうか。

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