未来への種まき~伝え続ける語り部プロジェクト~


高橋朋実さん「福島の“今”を五感で感じて」



「このツアー、私の知り合いが主催しているんですけど、もし興味あったら参加してみませんか?」

 友人の一言に押され、暑さも残る9月1日、福島県喜多方市の伝統産業と観光の関わりあいを考えるための「スタ☆ふく」ツアーに参加してきました。記憶に残るあの大震災から1年が経ちますが、正直なところ、このツアーに参加するまでは同じ東北に住んでいる私でも、大震災の被害については頭では理解していてもどこか実感が湧きませんでした。「福島の今を知ってもらいたい。まずは福島を好きになってもらいたい。」主催者である学生の熱い思いに揺り動かされ、私はこのツアーに参加することを決めました。

 ツアーの内容はとても充実しており、ひとつひとつについて語りたいというのが本音ですが、今回はその中でも特に印象に残った2つについて書かせていただきたいと思います。1つめは、伝統ある大和川酒造の社長である佐藤彌右衛門さんと、喜多方まちおこしのNPO法人に携わる蛭川さんの講演です。二人のお話に共通していたのは、喜多方市は直接的な被害は少なかったものの風評被害による観光や農業へのダメージがとても大きかったということでした。そのような苦境に立ちながらも「今、自分にできることは何か」を常に考え、率先して行動に移していたお二人のお話を聞いて、福島県民の方のたくましさを実感し、「支援」のあり方を考えさせられました。「支援」とはそんなに大それたものではなく、自分ができる範囲のどんなにささいなことでも構わない。そのように捉えたら、もっと自分にもできることが見つかるのではないかと思えるようになりました。2つめは、農家民宿でのお話です。受け入れ先の秋江さんから風評被害や震災当時の福島の様子、復興に対する思いなど、本や新聞、ニュースでは実感できない「生の声」をお聞きすることができました。アクティブで前 向きな秋江さんですが、震災について語る際に時折言葉を詰まらせる様子を見て、震災の被害がどれほどのものだったのかを垣間見ました。「放射能が…」と無意識に嫌悪する前にまずは福島を知ってほしい、この思いが今回のツアーを通して強く感じたことです。

 ツアーの内容はもちろん、主催者や参加者と福島に対する考えの変化やこれからの思いをシェアし、絆を作ることができたのは私にとってとても有意義でした。こうした小さな繋がりが大きな力に変わっていくのかなあ、と思います。

 今度は私が「福島に行こうよ!」と声をかけていきたいです。

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