未来への種まき~伝え続ける語り部プロジェクト~


須崎裕さん「人との繋がり」



初めまして、私は秋田県国際教養大学4年の須崎裕と申します。東日本大震災が発生した時、私は大学内のアパートにいました。大きな揺れと共に電気、ガス、水道が止まりました。真っ暗な学校で友人達と2日間を過ごし、ようやく電気が戻ってテレビをつけた時、初めて地震の凄まじさを目の当たりにしましました。それから間もなく、学生有志が集まり「私たち学生にできること」を求めて模索の日々が始まりました。学生が復興支援に関わることで学ばせて頂いたことをご紹介させて頂きたと思います。

一人では何もできない
復興支援団体が立ち上がったのは早かったものの、すぐに被災地へ向かうことは出来ませんでした。今まで体験したことの無い被害を前に車も無ければ、専門知識も無い学生集団には実質出来ることが無かったのです。なんとか被災地に向かおうと奮闘する中、たくさんの方からアドバイスや意見を頂きました。特にこの時有り難かったのが留学中の友人達からの意見でした。彼らは日本から離れた場所でこの震災を見ていて、被災地の隣県にいる私たちよりも圧倒的に冷静でした。私たちは彼らのアドバイスの下、県内様々な人々と繋がり強固な組織を形成することに力を注ぎました。そして、震災から一ヶ月後、県内大学初め、行政やたくさんの企業、NPO と繋がることができ、学生を安全に被災地へ運ぶ環境が整いました。何か事を興そうとするとき、周りにいる人々の声を聞くことの大切さを学びました。

おにぎりが教えてくれたボランティアの意味
ボランティア派遣が軌道に乗ってきた頃、私たちは新たな疑問を抱えていました。毎週末バスで被災地へ向かい、瓦礫の撤去や側溝に溜った泥掃除などを行うのですが、尋常も無い被害の中で私たちの活動にどれほどの効果があるのか分からなくなっていたのです。そんな時、いつものように朝から瓦礫を撤去していると、以前清掃した建物の中で地域のお母さん達が集まっていました。お昼になるとお母さん達は私たち学生を呼びました。そこへ行くとたくさんのおにぎりやお茶などが用意されていて「どうぞ、みなさん食べて下さい」と私たちに提供して下さいました。そして一人のお母さんが私に「毎週来てくれてありがとう。私たちももっと頑張って町が元気になったところを見せたくて、みんなが帰ったあとも活動しているよ。本当にありがとうね」と言って下さいました。良く見渡すと、先週よりも多くの地域の方々が活動に参加していることに気がつきました。そしておにぎりを頬張る学生と地域の人々がみんな笑顔になっていました。私たちの活動の本質は瓦礫をどれだけ無くすかではなく、同じ環境を共有する事にあると分かりました。

人と繋がる
震災と支援活動を通して学んだことは「人との繋がり」の重要性です。そして、それは日常的に存在しているにも関わらず、とても見えにくいものだと感じています。純粋に誰かの為に何かしたいと思う心は具体的に見せる事で初めて相手に届くことを学びました。震災から1年8ヶ月が経った今、当時の事が風化されつつあると言われています。重要なことは地域のお母さん達がおにぎりによって示してくれたように、相手に関わろうとする気持ちを実際に見せることだと感じています。人が繋がる事で生まれる愛の大きさに気付かせてくれた多くの方々に感謝の気持ちを持ち続け、これからも私なりに関わっていきたいと心から想います。

秋田県学生の活動
2011年3月秋田大学、県立大学、国際教養大学それぞれに復興支援団体が発足、秋田学生復興支援ネットワークとしてこれまでに1000人以上の学生を派遣。2012年11月現在も各大学特色のある支援を続けている。



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